gin-suzu6

銀座六丁目すずらん通り(SUZURAN STREET)を
発信するウェブマガジン

銀座コラム vol.13こだわりのいっぴん 【その5】

まずは、商品が一番。そして、その商品の特徴に合わせ、
床、壁、天井、そのエリアのデザインをいかにこだわるか

(株)バーニーズ ジャパン 取締役 クリエイティブディレクター 谷口勝彦

世界有数のスペシャリティストア『BARNEYS NEW YORK』。1923年、ニューヨークでバーニー・プレスマンが創業以来、まもなく100年。「テイスト・ラグジュアリー・ユーモア」という言葉と共に、常に既存の価値観にはない新しいムーブメントにチャレンジ、ファッションを通じて常に世の中を楽しませてくれているバーニーズ ニューヨーク。銀座店をはじめ、多くのお店作りに係ってきた(株)バーニーズ ジャパンの谷口勝彦さんに、そのこだわりについてお話を伺いました。

1990年に新宿店、1993年に横浜店、それから約10年あけて2004年に銀座店をオープンしました。この10年間は、出店がありませんでしたので、満を持しての開店。ニューヨーク本店にとっても、日本にとっても非常に大事なお店だったわけです。これまで永く一緒にやってきた設計・建築家であるピーター・マリノ氏のところにいたジェフリー・ハッチソン氏らとベーシックなものは残しつつ、新しいバーニーズ ニューヨークを作ろうと2年前から準備を開始しました。常に新しい文化・風習の発信地となってきた銀座という街であること、しかも、銀座のランドマークともいえる交詢社(福沢諭吉により提唱され創られた日本最古の社交機関)ビルに出店するという非常に貴重なプロジェクトでもあったわけです。様々なエピソードがありましたが、ニューヨークも日本もデザイン=店作りに力を入れこだわりました、私も最も思い出に残るお店となりました。

地下1階から2階まで、吹き抜け部分にある鉄のスカルプチャーウォールは、アーティストのジョン=ポール・フィリピ氏がデザインしたもので、鹿児島の屋久島にある縄文杉からイメージしたオブジェです。また、地下1階から2階まで、店の中心には階段があります。ここを「店の象徴」としました。言われないと気づかないのですが、手すりが、V字に広がっているんですよ。さらに、ステップはライムストーンで、手すりは木製。お客様が自然に気品を感じてもらえるように設計しました。様々な素材や異なるデザインディテールをミックスし、それをまとめることで一つの強いイメージを創り、他店との違いや、バーニーズ ニューヨークに来る理由、そして買い物する面白さをお伝えしたいのです。

最も大事なのは商品です。まずは、商品ありき。そして、それぞれのエリアに置いてある商品の特徴に合わせて、床、壁、天井、そのエリアをデザインします。商品と環境をマッチさせ、いかにムードや雰囲気を出すか。さらに、いかにお客様に高揚感をもっていただけるか、というのがデザインのこだわりになります。

また、バーニーズ ニューヨークにはいろいろな格言があるのですが、ひとつご紹介すると「テイスト・ラグジュアリー・ユーモア」という言葉があります。商品・サービスからディスプレイ、広告まで、全てのことのベースになるもので、バーニーズエアとも称される独自のテイスト、世界有数のスペシャリティストアならではのラグジュアリーさ、そして、そこに必ずひねりの利いたユーモア。バーニーズ ニューヨークを一言で表現すると、この言葉に集約されます。

例えば、買ってきた絵を飾るのではなく、壁に直接絵を描いてしまうわけです。ハンドメイドのミューラルアートを感じていただく。モダンなものとの対比で、それが人間臭さを感じさせます。大変ご好評をいただき、バーニーズ ニューヨークの象徴ともなっている「ウィンドウディスプレイ」もあえて日中に行って、制作風景をお見せしたり…。接客もそうですし、商品の買い付けも、建物を建てるのもそう。「テイスト・ラグジュアリー・ユーモア」それがバーニーズ ニューヨークのいろいろなところにちりばめられているのです。皆さまも銀座店にいらして、どうぞ一度体験してみてください。